吉祥寺ダンスリライトvol.3 「○○のココを推す!!」

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ページ番号1004789  更新日 2023年3月24日

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写真:北尾亘

3/24(金)~26(日)に吉祥寺シアターで開催される『吉祥寺ダンスリライトvol.3』。
毎回、ダンスの未来を“リライト”する気鋭の若⼿振付家・カンパニーを選出し、多彩な上演を行ってきた。

vol.3では上演に先駆けて、総合ディレクターの北尾亘と、本公演の担当職員に各団体の推しポイントを語ってもらった。
ぜひこの文章を通して、未来を見つめる若⼿振付家・カンパニーを見出し、公演に期待を寄せていただければと思う。

初日まで、毎日更新予定。

総合ディレクター:北尾 亘 プロフィール
幼少より舞台芸術に携わり、クラシックバレエからストリートダンスまで様々なダンスを経験。
2009年ダンスカンパニー[Baobab]を立ち上げ、全作品の振付・構成・演出を担うほか、振付家としても活躍。
横浜ダンスコレクション2018コンペティションⅠベストダンサー賞[2018]、ベッシ―賞OUTSTANDING PERFORMER部門ノミネート[2020]等受賞多数。

Null(Aプログラム)

「Null」 の 【多角的な視点】 を推す!

他カンパニー所属ダンサーとしても活躍するメンバーによって構成されたNullは、近年では少々珍しい複数名での創作を行うダンスグループ。作品毎に見出すコンセプトに対しそれぞれの視点や価値観を交感する事で、“多角的な視点”を持った作品を生み出している。

奥深い作品の世界観からは「○○を魅せたい」という欲望以上に「浮き彫りになる情感」のようなものが見えてくる。その質感とは対照的に、強靭な肉体から放たれるムーヴとエネルギーも大いなる魅力である。このギャップが折り重なる事で初めて、Nullらしく新しい世界が立ち上がるのだろう。

今作でも、その [趣向と身体] を存分に発揮してもらえることが楽しみである。

総合ディレクター 北尾 亘

「Null」 の 【浮きたつボディと繊細な世界観】 を推す!

吉祥寺ダンスリライトのコンセプトとして挙げている「身体性=踊る身体」をまさに体現するアーティスト。

高い身体性が生む、偶然の重なりの結晶のようにクリエーションを行っている印象。カンパニーが掲げる「あらゆるテーマに対してまず〈ゼロ〉からの視点で捉え」ることで、踊りという表現芸術の癖をある種利用して、自身らの表現に“リライト”している。

洗練された技術と強靭なボディで放つ、繊細で作りこまれた作品の世界観は必見。

吉祥寺シアター制作 石川

null舞台写真

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吉沢楓(Aプログラム)

「吉沢楓」 の 【独創的な世界線】 を推す!!

最初にダンサーとして彼女を目撃した際、即座に「センスに長けた人だ!」と認識した。

作品世界への考察や客観的視点を持ち合わせ舞台に立てるダンサーは稀有で、その姿はユーモラスであり悲哀や情熱など複雑な表情を魅せていた。2つ目の驚きは主宰カンパニーBaobabが催すダンスフェスに登場した際、この時には集団作品で途轍もないインパクトを残し、変幻自在な創作センスを光らせた。

【独創的な世界線に観客を誘う時】、それは不特定多数の目に触れる機会で集団作品を手掛ける時ではないかと感じる。期待に対しての応答も裏切りも仕掛けられるのは、客観性や複雑な欲望を併せ持っているからだろう。

新作で臨む今公演でダンスに限らず作曲や言葉など、様々な角度から予想を裏切ってくれることを期待する。

総合ディレクター 北尾 亘

「吉沢楓」 の 【突出した美的感覚】 を推す!

観客を巻き込み、舞台や客席をまとめて一気に惹き込む情熱を秘めた静かな影響力が印象的。

また、実験的、挑戦的なクリエーションの上に組み上がる作品は、彼女自身が踊っていなくても「まさに『吉沢楓』そのもの」と分かるほど異彩を放ち、他に見ない独創性を持つ。

言葉・体・音・モノを操り、引きずり込まれ浸かっていくような読後感で、観客の舞踊観を"リライト"してもらいたい。

吉祥寺シアター制作 石川

吉沢楓舞台写真

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田村興一郎(A,Bプログラム)

「田村興一郎」 の 【飽くなき創作欲】 を推す!

ダンスリライト vol.2より「若手ダンサー活躍の場」として始まった公募ダンサーによる上演枠。
クリエイターのバトンを私から手渡した田村興一郎は【飽くなき創作欲】を奮い立たせ、2作の短編新作を創り上げた。
集ったダンサーの個性に目を向けて、[Vol.1出演→単独公演]と慣れ親しんだ吉祥寺シアターの空間に耳を傾け、この機会を存分に堪能しようとする姿勢に「新たな世代が切り拓く未来」に思いを馳せる。

と同時に、私自身もまたこのシアターでの創作意欲を掻き立てられている事に感謝したい。
こうしてアーティスト同士が更新=上書きし合う相乗効果こそ、“吉祥寺ダンスリライトの展望”であったから。ダンサー達の欲求も身体から放たれる時を楽しみにしている。

総合ディレクター 北尾 亘

「田村興一郎」 の 【吸収力と発信力】 を推す!

前回北尾さんが担った公募ダンサーとの創作をバトンタッチする、ハードルの高いオファーであったにもかかわらず、瞬く間に全く毛色の異なる2つの新作を一から創り上げた。
あらゆるジャンルを経てきた経験値があってこそだが、加えて俯瞰した目線を持ち踊りに依存しない態度が、湧き出るアイデアを呼んでいるように感じる。

踊りという表現を借りて一貫したメッセージを訴えかけてくる2作品を、是非生の舞台で目の当たりにしていただきたい。

吉祥寺シアター制作 石川

田村興一郎 舞台画像

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大森瑶子(Bプログラム)

「大森瑶子」 の 【振付力】 を推す!!

若くして頭角を現した大森瑶子の【振付力】は目覚ましい進化を遂げ止まる所を知らない。
今回の新作ではその一つの境地が見られるかもしれない。

近年のストリートダンスの躍進はコンテンポラリーダンスの世界にも多分に影響を与えているが、“確かな技術”と“独自の探求(オリジナリティ)”を共存させる事は容易でない。それを実現出来るのは愚直なまでの向上心と探究心が彼女と彼女のもとに集うダンサー達に在るからだろう。
一糸乱れぬ数多のムーヴとバリエーションで観る者を圧倒し、その隙間に顔を覗かせる演出の断片によって「技巧だけではない等身大の彼女ら」のリアルな姿が浮き彫りになるだろう。今作が代表作となる予感に胸を躍らせている。

総合ディレクター 北尾 亘

「大森瑶子」 の 【踊りのボキャブラリーの莫大さ】 を推す!!

身体性・技術の高さはもちろんのこと、構想を音に乗せて動きとして体に落とし込む能力が凄まじい。次から次へと繰り出される、自分の横をかすって通っていくようなパンチの効いたムーヴに息をのみ、気付いたら見入っている。
舞台には「大森瑶子」という共通言語が存在しているような錯覚を覚える。この感覚は是非とも生で味わっていただきたい。

選曲のニッチさにも注目。その曲とその振付で、なんで真顔で踊れるのかわかりません(ポジティブな意味です)。

吉祥寺シアター制作 石川

大森瑶子 舞台写真

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tantan(Bプログラム)

「tantan」 の 【頑ななまでの今日性】 を推す!!

主宰である亀頭可奈恵により早くからカンパニー活動を開始したtantanは多くの作品を生み出してきた。その作品世界の深淵はタイトル・ビジュアルなどからも「個性的なカンパニーである」ことは明白。ダンスリライトの主柱である“将来性”というテーマにおいて、継続的な創作活動や単独企画の主催は最も好ましく、他を寄せつけない勇ましさで独自の表現を追求する姿勢も大いなる魅力である。

【頑ななまでの今日性】は、私の推察と想像を含んで記している。必要以上に群れる事はせず、「社会と自分達との距離、妄想、衝突、嫌悪」など彼女達自身の【今日(こんにち)】を栄養にし、尚且つ内向的に収まらないパフォーマンスを生み出しているのではないかと。もしそうならば、7年前に出会った際の衝撃と変わらぬ【頑なさ】の先でtantanの現在に出会えるのではないかと期待している。

総合ディレクター 北尾 亘

「tantan」 の 【等身大の女性の、非日常化した日常】 を推す!!

カンパニーのコンセプトで、「入り口から出口までが遊園地」と挙げているように、踊ることだけに捉われないエンターテイメントを提供することにこだわっている。

心の奥を抉るような表現と、ありのままの女性の姿かたちを舞台にさらけ出し、閉じこもっているようでそれすらも外に向けて爆発させる気持ちよさが見どころ。

吉祥寺シアター制作 石川

tantan 舞台写真

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