【萩原英雄記念室】抽象の精神
- 会期
- 2026年3月12日(木曜)~2026年5月31日(日曜)
- 会期中休館日
- 2026年3月25日(水曜)、4月1日(水曜)~4月17日(金曜)、4月30日(木曜)、5月27日(水曜)
戦後、自身の創作の原点にある「写実的スタイル」を捨て、「抽象表現」へと向かった萩原。1953年に重度の結核を患い、3年に及ぶ療養所生活の中で版画制作に出合うと、さらに表現は抽象へと傾いていきます。写実表現から抜け出すために、物を見ずに描く練習を始め、次第に、美の根源に抽象を見出していきました。「“花が美しい”と感じるとき、その美しさの本質とは花の形や色ではなく、中から訴えてくるもの――つまり抽象の精神です。だからわれわれは、日本的な平面が持つ装飾性を武器とした精神性をこそ表現しなくては駄目なのです。それらのことが、僕が病院で抽象へ本格的に方向転換する理由となりました。」*1 その後、萩原が浮世絵の美しさを分析して独自に開発したといわれる「両面刷り」の手法を用いて、代表作「石の花」シリーズをはじめとする作品が誕生。意図的に裏から表に色をにじみ出させ、それを活かして表面から版を刷り重ねていくこの方法を試みた、最初の作品が「悪の華」シリーズだと自身の言葉で述べています。*2
本展では、1960年制作の《悪の華(1)》や、《萌芽(3)》(1963年)の画面のなかに見える、赤や青、緑、白に黒、黄色に着目。多彩な技法を生み出していく1950年代から90年代に至る、それぞれの色が画面を支配する作品を展示致します。装飾的で美しい、これらの色と平面的なフォルムの向こうにある本質とは? 萩原が目指した抽象表現と対峙することで、作品に宿された精神性に触れてみてはいかがでしょうか?
*1 「写実を越えた造形の理」萩原英雄(「版画藝術98 抽象木版画の源流」阿部出版株式会社 1997年)より
*2 『日本現代版画 萩原英雄』(玲風書房 1992年)より
萩原英雄略歴
- 1913(大正2)年
- 山梨県甲府市に生まれる
- 1932(昭和7)年 19歳
- 白日会第9回展に油彩「雑木林」出品、光風会展第19回展に油彩「上り道」出品
- 1938(昭和13)年 25歳
- 東京美術学校(現東京藝術大学)油画科卒業
- 1951(昭和26)年 38歳
- 銀座資生堂で「萩原英雄(油彩)」個展開催
- 1956(昭和31)年 43歳
- 銀座養清堂画廊で「萩原英雄版画」個展開催、日本版画協会、第24回展出品、以後、第43回展を除き出品を重ねる
- 1960(昭和35)年 47歳
- 第2回東京国際版画ビエンナーレで神奈川県立近代美術館賞受賞
- 1962(昭和37)年 49歳
- 第7回ルガノ国際版画ビエンナーレでグランプリ受賞
- 1963(昭和38)年 50歳
- 第5回リュブリアナ国際版画ビエンナーレでユーゴスラビア科学芸術アカデミー賞受賞
- 1966(昭和41)年 53歳
- 第5回東京国際版画ビエンナーレで文部大臣賞受賞
- 1967(昭和42)年 54歳
- 第1回チェコスロバキア国際木版画ビエンナーレでグランプリ受賞
- 2007(平成19)年
- 11月東京で歿、享年94歳