まどかなる〈もの〉
- 会期
- 2025年6月12日(木曜)~2025年11月3日(月曜)
- 会期中休館日
-
2025年6月25日(水曜)、7月9日(水曜)、10日(木曜)、15日(火曜)~25日(金曜)、30日(水曜)、8月27日(水曜)、9月8日(月曜)~19日(金曜)、24日(水曜)、10月29日(水曜)
浜口陽三は、日常生活において身近にあるものをモチーフとしています。
モチーフには、果物、花や生物など、とりわけ円い形状のものが選ばれています。それらのものが実際に置かれている場に生ずる陰影、あるいはそれらをとりまく環境が、具体的に描写されることはありません。空間のうちに浮かんでいるごとくにあらわされたモチーフは、その円さもあいまって、個別性から離れ、普遍的な〈もの〉そのものとして、私たちに示されるかのようです。
しかし、浜口はあくまで、モチーフとして選んだものそれぞれを、個別にうけとめ、観察したうえで、その在りようを画面に構成しています。浜口が描くモチーフが、静謐で深遠な空間のうちにありつつも、「ほとんど「艶」といってもよいような日常性の『媚び』」(中山公男)、あるいは「艶冶で豊かな雰囲気」(柏倉康夫)をたたえているのは、彼がモチーフ個々に抱く興味関心、あるいは希求が、そこに強くあるからなのでしょう。浜口が描く〈もの〉は、普遍的であるようでいながら、現下の個としての私たちを突き放しはしません。
モチーフの円さは、私たちを含む存在そのものをつつみ込むようでもあります。浜口が描く、何ということはない、日常のなかの〈もの〉たちは、いま、ここに在るということの奥深さを、私たちに教えてくれるのです。

浜口陽三略歴
- 1909(明治42)年
- 和歌山県広川村に生まれる
-
1930(昭和5)年
21歳
-
東京美術学校(現東京藝術大学)彫刻科中退、パリに移住
-
1933(昭和8)年
24歳
-
サロン・ドートンヌに出品
-
1938(昭和13)年
29歳
-
パリで水彩画と版画の最初の個展開催
-
1953(昭和28)年
44歳
-
関野準一郎、駒井哲郎と共に日本銅版画家協会を創設
-
1954(昭和29)年
45歳
-
第1回現代日本美術展で「スペイン風油入れ」と「ジプシ-」が佳作賞受賞
-
1957(昭和32)年
48歳
-
第1回東京国際版画ビエンナーレで国立近代美術館賞受賞
第4回サンパウロビエンナーレ国際美術館グランプリ受賞 -
1961(昭和36)年
52歳
-
第4回リュブリアナ国際版画ビエンナーレグランプリ受賞
-
1977(昭和52)年
68歳
-
第12回リュブリアナ国際版画ビエンナーレサラエボ美術アカデミー賞受賞
-
1982(昭和57)年
73歳
-
北カリフォルニア版画大賞展グランプリ受賞
- 2000(平成12)年
-
12月東京で歿、享年91歳