海を越えて
- 会期
- 2025年3月6日(木曜)~2025年6月1日(日曜)
- 会期中休館日
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2025年3月26日(水曜)~4月11日(金曜)、4月30日(水曜)、5月28日(水曜)
1981年10月、浜口陽三は40年間住み慣れたパリを離れて、サンフランシスコへと移住します。70歳を超えて海を渡るという浜口に、周囲は皆驚いたといいます。しかも、当時アメリカでは、浜口特有のメゾチントという技法があまり普及していなかったこともあり、刷師をみつけること自体が困難な状況でした。サンフランシスコでは、満足のいく状態に刷れるまでに5年かかったと浜口は回想しています。本展では、そのなかでも、1982年の北カリフォルニア版画大賞展にてグランプリを受賞した《西瓜》(1981年)をはじめ、1980年代に制作された作品を中心にご紹介します。
同じ頃、1978年から8年間をニューヨークで過ごした、ひとりのイラストレーターがいました。アニメーターとして活躍後、40歳を過ぎて東京を飛び出した、永沢まこと<1936-2022>。多様な人種であふれる大都会で、永沢の心を捉えたのは、繁華街や地下鉄などで出会ったニューヨーカーたち。特有の軽快なスケッチ・スタイルで描いた街の景観からも、都会の喧騒やそこに生きる人々の息づかいが伝わって来ます。永沢が画面に留めた風景を通して、当時のニューヨークの姿を、40年後の現在、わたしたちは垣間見ることができるのです。
冬のパリの陰鬱さを厭うたという、浜口は「(アメリカには)ヨーロッパにはない伸びやかさ、解放感がある」と述べています。永沢のペンスケッチから生み出された作品からも、大都会ならではの自由で軽やかな雰囲気が漂います。今回は、1980年代に同じ異国に身を置いたふたりそれぞれの魅力をお楽しみいただきます。
引用は『浜口陽三著述集 パリと私』(2002年、玲風書房)より


浜口陽三略歴
- 1909(明治42)年
- 和歌山県広川村に生まれる
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1930(昭和5)年
21歳
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東京美術学校(現東京藝術大学)彫刻科中退、パリに移住
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1933(昭和8)年
24歳
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サロン・ドートンヌに出品
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1938(昭和13)年
29歳
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パリで水彩画と版画の最初の個展開催
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1953(昭和28)年
44歳
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関野準一郎、駒井哲郎と共に日本銅版画家協会を創設
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1954(昭和29)年
45歳
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第1回現代日本美術展で「スペイン風油入れ」と「ジプシ-」が佳作賞受賞
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1957(昭和32)年
48歳
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第1回東京国際版画ビエンナーレで国立近代美術館賞受賞
第4回サンパウロビエンナーレ国際美術館グランプリ受賞 -
1961(昭和36)年
52歳
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第4回リュブリアナ国際版画ビエンナーレグランプリ受賞
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1977(昭和52)年
68歳
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第12回リュブリアナ国際版画ビエンナーレサラエボ美術アカデミー賞受賞
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1982(昭和57)年
73歳
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北カリフォルニア版画大賞展グランプリ受賞
- 2000(平成12)年
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12月東京で歿、享年91歳