黒をよく知る

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ページ番号1005388  更新日 2023年12月7日

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会期
2023年11月9日(木曜)~2024年3月3日(日曜)
会期中休館日

2023年11月29日(水曜)、11月29(水)~12月7日(木)、12月13日(水曜)~2024年1月19日(金曜)、1月31日(水曜)、2月21日(水曜)、2月28日(水曜)

 

 「脳が弱いのか体力が無いのか、僕は何でも直ぐ飽きてしまう。絵を描いていても直ぐいやになってくる。何をやってもつくづくいやになる。そして、メゾチント銅版画の様な手間と時間のものすごくかかる仕事を、どうして好きになってしまったのかと、またいやになる」。自らを“飽きっぽい横着者”と称する浜口が、いやになりながらも夢中になった「メゾチント」の技法。尖端がのこぎり状になった鋼鉄製の「ベルソー」という道具を銅版の上で長時間、あらゆる方向に動かし続けることで、表面に無数の小さな穴を開けていく。手がしびれるほどの重労働で面倒な下地作りの作業であるにも関わらず、浜口は必ず自らの手で行いました。

 黒から白への濃淡が微妙な変化を見せる「メゾチント」、フランス語でいう「マニエール・ノワール」(黒の手法)が画面にもたらす、美しい“暗闇”に魅入られた浜口。本展では、戦後、1953年に渡仏する以前に制作された《隅田川(大川中州付近)》(1951年)や《館》(1951年)をはじめとする東京の風景画や、独自の世界を確立したといわれる代表作《スペイン風油入れ》(1954年)など、1950年代に浜口が手掛けた初期作品を中心に展示。技法と向き合い、道具を良く知ることで、画面から荒い線が消え、次第に深みを増していく、まるでビロードを思わせる艶やかな黒の描写の変化を追います。

作品:館
浜口陽三《館》1951年

浜口陽三略歴

1909(明治42)年
和歌山県広川村に生まれる

1930(昭和5)年

21歳

東京美術学校(現東京藝術大学)彫刻科中退、パリに移住

1933(昭和8)年

24歳

サロン・ドートンヌに出品

1938(昭和13)年

29歳

パリで水彩画と版画の最初の個展開催

1953(昭和28)年

44歳

関野準一郎、駒井哲郎と共に日本銅版画家協会を創設

1954(昭和29)年

45歳

第1回現代日本美術展で「スペイン風油入れ」と「ジプシ-」が佳作賞受賞

1957(昭和32)年

48歳

第1回東京国際版画ビエンナーレで国立近代美術館賞受賞
第4回サンパウロビエンナーレ国際美術館グランプリ受賞

1961(昭和36)年

52歳

第4回リュブリアナ国際版画ビエンナーレグランプリ受賞

1977(昭和52)年

68歳

第12回リュブリアナ国際版画ビエンナーレサラエボ美術アカデミー賞受賞

1982(昭和57)年

73歳

北カリフォルニア版画大賞展グランプリ受賞

2000(平成12)年

12月東京で歿、享年91歳