やわらかな黒

Xでポスト
フェイスブックでシェア
ラインでシェア

ページ番号1003579  更新日 2022年5月17日

印刷大きな文字で印刷

会期
2022年6月16日(木曜)~11月13日(日曜)
会期中休館日

2022年6月29日(水曜)、7月27日(水曜)~8月5日(金曜)、8月31日(水曜)、9月20日(火曜)~30日(金曜)、10月26日(水曜)

 黒から白への濃淡が微妙な階調を生み出すメゾチントを独学で習得し、のちに、赤・青・黄・黒の4つの版を重ねて刷るカラーメゾチントという新たな技法を開拓した浜口陽三。モチーフとなったのは、蝶やてんとう虫、さくらんぼなどの身近な静物たちで、静寂が支配する暗闇の中を、淡い光を放ちながら浮かび上がるそれらは、奥深い情感をたたえ、国際的に高く評価されました。

 浜口の作品は、吸い込まれるような深い漆黒の闇が印象的ですが、目を凝らしてみると、単調な黒一色ではなく、漆黒に近い黒もあれば、わずかに色づいている複雑な黒もあります。黒の表現について浜口は、「ぼくの作品で大切なのは光かもしれない。闇に対する光という意味でね。だから闇、つまり黒の部分はもっと大切なんです。」(『パリと私-浜口陽三著述集』2002年)と述べており、光への鋭い感性でもって表現された闇は、繊細な色の重なりによって光を含んだようなやわらかな黒となり、モチーフをやさしく包み込みます。

 本展では、モチーフが配置された暗闇に注目してご覧ください。かすかな光を携えたやわらかな黒による幻想的な空間をご堪能いただければ幸いです。

作品:西瓜
浜口陽三《西瓜》1981年

浜口陽三略歴

1909(明治42)年
和歌山県広川村に生まれる

1930(昭和5)年

21歳

東京美術学校(現東京藝術大学)彫刻科中退、パリに移住

1933(昭和8)年

24歳

サロン・ドートンヌに出品

1938(昭和13)年

29歳

パリで水彩画と版画の最初の個展開催

1953(昭和28)年

44歳

関野準一郎、駒井哲郎と共に日本銅版画家協会を創設

1954(昭和29)年

45歳

第1回現代日本美術展で「スペイン風油入れ」と「ジプシ-」が佳作賞受賞

1957(昭和32)年

48歳

第1回東京国際版画ビエンナーレで国立近代美術館賞受賞
第4回サンパウロビエンナーレ国際美術館グランプリ受賞

1961(昭和36)年

52歳

第4回リュブリアナ国際版画ビエンナーレグランプリ受賞

1977(昭和52)年

68歳

第12回リュブリアナ国際版画ビエンナーレサラエボ美術アカデミー賞受賞

1982(昭和57)年

73歳

北カリフォルニア版画大賞展グランプリ受賞

2000(平成12)年

12月東京で歿、享年91歳