悠久のとき

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ページ番号1003370  更新日 2022年5月3日

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会期
2022年3月3日(木曜)~6月5日(日曜)
会期中休館日

2022年3月30日(水曜)~4月15日(金曜)、4月27日(水曜)、5月25日(水曜)

 浜口陽三の銅版画に描かれる貝、魚、かに、ひとで…。“海”を連想させるこれらのモチーフは、浜口作品のなかでどこか異質に感じられるものの、フランス語で“マニエール・ノワール(黒の技法)”と呼ばれるメゾチントの技法を用いた、黒を基調にした明暗表現には、1979年制作の《9つの貝殻》に見られるような、“深い海の底”というイメージがしっくりと馴染ます。複雑に色を重ねるカラー・メゾチントの手法においても、魚たちが泳ぐ水の中の静かな揺らめきや、暗い海に眠る貝殻の鮮やかな色調など、微妙な光の表現を試すためには格好の設定であったのかもしれません。

 浜口の暗闇に沈むような奥行きある絵画空間と対峙する際、多くの人が音のない静寂な世界を思い浮かべることでしょう。まるで、はるか昔からそこにあるような、時間が止まったような、悠久のときを感じさせる空間。浜口陽三の作品を通して、ゆっくりとたゆたうように流れる時間をお楽しみください。

作品:7つの貝殻
浜口陽三《貝》1960年
作品:魚の群れ
浜口陽三《さかな》1959年

作品:黄色い貝殻
浜口陽三《貝》1974年
作品:ひとでの絵
作品:浜口陽三《ひとで》1960年

浜口陽三略歴

1909(明治42)年
和歌山県広川村に生まれる

1930(昭和5)年

21歳

東京美術学校(現東京藝術大学)彫刻科中退、パリに移住

1933(昭和8)年

24歳

サロン・ドートンヌに出品

1938(昭和13)年

29歳

パリで水彩画と版画の最初の個展開催

1953(昭和28)年

44歳

関野準一郎、駒井哲郎と共に日本銅版画家協会を創設

1954(昭和29)年

45歳

第1回現代日本美術展で「スペイン風油入れ」と「ジプシ-」が佳作賞受賞

1957(昭和32)年

48歳

第1回東京国際版画ビエンナーレで国立近代美術館賞受賞
第4回サンパウロビエンナーレ国際美術館グランプリ受賞

1961(昭和36)年

52歳

第4回リュブリアナ国際版画ビエンナーレグランプリ受賞

1977(昭和52)年

68歳

第12回リュブリアナ国際版画ビエンナーレサラエボ美術アカデミー賞受賞

1982(昭和57)年

73歳

北カリフォルニア版画大賞展グランプリ受賞

2000(平成12)年

12月東京で歿、享年91歳