鈴木のりたけの”しごとば”展 進化する絵本の世界

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ページ番号1003719  更新日 2022年8月8日

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会期
2022年8月6日(土曜)~9月19日(月曜・祝日)
休館日
8月31日(水曜)
開館時間
10時00分~19時30分
入館料
300円(中高生100円、小学生以下・65歳以上・障がい者の方は無料)
主催
武蔵野市立吉祥寺美術館<(公財)武蔵野文化生涯学習事業団>
協力

ブロンズ新社/アリス館/KADOKAWA/小学館/PHP研究所

 作品:鈴木のりたけの”しごとば”展ポスター画像


“しごとば”には、鈴木のりたけが発見した、「面白い」があふれています。「仕事の現場を絵本にする」という発想で、2009年に誕生した「しごとば」シリーズは、2020年刊行の『やっぱり・しごとば』を含めて計6冊。「カラッとした絵で、情報をきちんと伝えたい」と作家自身が綿密な取材を重ね、それぞれの仕事の醍醐味を一枚の絵に落とし込む独自の手法で子どもたちの心をつかんでいます。

本展では、新幹線運転士、宇宙飛行士、消防隊員、女優、米農家、客室乗務員、特殊メイクアップアーティスト、プロサッカー選手、恐竜学者、オーケストラ団員、医者など、計20職種の“しごとば”の原画を展示。絵のなかに入り込むように、じっくりと視線を巡らせてみれば、「働くって楽しい」という思いが、どの“しごとば”からもしっかりと伝わって来ます。現実の社会にもワクワクする気持ちがあふれていることを子どもたちに知ってほしいと、あえてリアルを追求して描かれていますが、「しごとば」シリーズは“職業紹介図鑑”ではありません。作家が取材で感じた「面白い」が知的好奇心をくすぐる、最先端の“進化する絵本”なのです。

ダジャレ好きな作家は、思わず声を上げて笑い出したくなるような「面白い」を発見して、絵本の形に落とし込むのも得意。デビュー作『ケチャップマン』 から14年、常に革新的な手法で子どもたちの想像力を刺激し続けています。本展では、約160点の原画を展示。そのなかには、「しごとば」シリーズ以外の代表作の絵本原画・約70点も含まれます。会場では、鮮やかな色彩や、遊び心あふれる緻密な表現にどっぷりとはまって、鈴木のりたけの“進化する絵本の世界”を存分に楽しんで頂ければ幸いです。

じっくり視線を巡らせて! 知的好奇心をくすぐる“進化する絵本”

計20職種! 仕事の現場を絵本にする…「しごとば」シリーズの原画88点&ラフ(コピー)の展示

どの“しごとば”からも、伝わってくるのは、大人たちの「働くって楽しい」という気持ち。展覧会に来てくれた子どもたちには、宝探しのように絵の中の「面白い」をたくさんみつけてほしいと私たちは願っています。子どもたちの未来の“しごとば”がキラキラと輝くように…。

そして、ダジャレや絵探し、のりたけさんからの指令「●●をさがそう!」など、子どもたちを飽きさせないお楽しみは盛りだくさん。「仕事は必ずだれかの仕事につながっている」。各“しごとば”の一枚絵のなかに、ほかの“しごとば”に関するアイテムが確固たる意図を持って描かれているのも、シリーズの醍醐味。のりたけさんの遊び心たっぷりのしかけにも注目です。

さぁ、「しごとば」シリーズはどのように進化していったのでしょうか? 88点の原画を通して、“しごとば”の変遷を探ります

吉祥寺美術館発! 展覧会で“しごとば”の絵を楽しむための6箇条

作品:サッカー選手
ⓒNoritake Suzuki

 

  1. はじめに、ワクワクしながら“しごとば”の絵をじっくりとみわたすべし。
  2. ふしぎにおもったこと、気になったことを心にとどめるべし。
  3. ドキドキしながら、さらにすみずみまで、かんさつすべし。
  4. この“しごとば”ではたらく人のことをそうぞうすべし。
  5. “どうぐ”や“しごとのながれ”の絵で、ちょっぴり“しごと”のちしきをふやすべし。
  6. とにかく、た~くさんの「おもしろい」をさがすべし。
作品:新幹線の一枚絵
新幹線運転士 『しごとば』(ブロンズ新社 2009年)より

「しごとば」誕生! 鈴木のりたけの仕事の原点から出発進行!
2009年刊行の『しごとば』のなかから、鈴木のりたけさん自身の“しごと”であった、「新幹線運転士」と「グラフィックデザイナー」を展示することで、デザイナーとしても働きながら、二足のわらじで、のりたけさんが制作した、”しごとば”を展覧会の出発点とします。「新幹線運転士」では、コックピットからの視界が広がり、操縦士のような気持で絵のなかに入り込むことができます。それぞれの”しごとば”を見ることによって、働く人の個性や存在が浮かびあがってくる「しごとば」シリーズに通底するベースが、1作目でしっかりと形作られているのがわかります。

作品:花屋
花屋 『続・しごとば』(ブロンズ新社 2010年)より
 作品:花屋のラフ
花屋のラフ

絵本作家・鈴木のりたけが描く”ワクワク感”
2巻目の『続・しごとば』では、前作より一歩踏み込んで、人と関わって働く場所としての”しごとば”が描かれるようになります。「ぼくが一番好きな巻かもしれない」という言葉通り、得意のダジャレがどの場面にも盛り込まれ、「花屋」の一枚絵には、「動物は何匹?」という、のりたけさんからの指令も隠されています。「プロ野球選手」「宇宙飛行士」「本屋」。華やかな職業に限らず、舞台裏から”しごとば”をのぞき見するような、ワクワクする視点が画面に加わります。

作品:消防隊員の一枚絵
消防隊員 『続々・しごとば』(ブロンズ新社 2011年)より

人がいきいきとはたらくリアルな”しごとば”
一枚絵を描くための技術が次第に身についてきたと自身でも感じた『続々・しごとば』。「消防隊員」の一枚絵では、日々の訓練や、設備がいかに欠かせないかを目に見える形で伝え、「米農家」の一枚絵では、苗を育て、田植えをし、収穫し、精米にいたるまでの工程に必要な機械がすべて描かれています。「女優」と「新聞記者」では、たくさんの人々が関わって成り立つ職業ゆえのライブ感が、画面いっぱいにあふれています。

作品:スカイツリーの一枚絵
現場監督と職人 『しごとば 東京スカイツリー®』(ブロンズ新社 2012年)より

絵の世界を疑似体験! 2年半の取材日記
2009年の夏から2年半にわたり制作。実に32回の取材を経て、2012年に刊行された『しごとば 東京スカイツリー®』。スカイツリー完成までの“しごと”の様子を各段階ごとに追っていく、いわばドキュメンタリー絵本です。「現場監督と職人」では、空中から作業員と同じ目線で、現場全体をとらえており、まるで、自分自身も、現場監督と同じ高さにいるかのような臨場感をもって、”しごと”を疑似体験しているような気持ちになります。

作品:客室乗務員
客室乗務員 『もっと・しごとば』(ブロンズ新社 2014年)より

好奇心に火をつけろ! 大胆な構図で面白さ倍増!
子どもたちにとって憧れの職業のひとつである「客室乗務員」では、華やかなだけでは決してない、裏方としての仕事内容を一枚絵のなかに端的に表現することで、いきいきと働く女性としての魅力が伝わってきます。「花火師」「特殊メイクアップアーティスト」「水族館飼育員」。2014年刊行の『もっと・しごとば』には、好奇心をくすぐられた瞬間を画面にギュッと閉じ込めたかのようなエネルギーがあふれています。

作品:サッカー選手
プロサッカー選手 『やっぱり・しごとば』(2020年)より

新しい階段をあがろう! さぁ 未来の”しごとば”へ!
2020年のコロナ禍、6年ぶりに刊行された『やっぱり・しごとば』。「プロサッカー選手」では、細部描写が際立っていた、これまでの一枚絵とは異なる、迫力あふれる構図を用いています。「恐竜学者」「オーケストラ団員」「料理研究家」「医師」。本巻では、より専門的な職種が選ばれているように思えます。また、子どもたちが楽しめるように「ペンギン」と「にんじゃ」がどの”しごとば”にも必ず隠れているのも、お楽しみのひとつ。さぁ、未来の”しごとば”は、これからどのように変化していくのでしょうか?


写真:鈴木のりたけ
Photo : Yoshinori Kurosawa
【鈴木のりたけ Noritake Suzuki】
1975年、静岡県浜松市生まれ。グラフィックデザイナーを経て、絵本作家となる。 『ぼくのトイレ』(PHP研究所)で第17回日本絵本賞読者賞、『しごとば 東京スカイツリー®』(ブロンズ新社)で第62回小学館児童出版文化賞、ほか受賞多数。 主な絵本作品に、「しごとば」シリーズ(ブロンズ新社)、『ぼくのおふろ』『す~べりだい』(PHP研究所)、『おしりをしりたい』『おつかいくん』『大ピンチずかん』(小学館)、『とんでもない』『なんでもない』 (アリス館)、『うちゅうずし』(KADOKAWA)など多数。

美しい色彩と精緻な表現に、どっぷりはまって! 笑いがこぼれる“進化する絵本”

キーワードは7つ…代表作の原画約70点を展示

7つのキーワードとともに、代表作の絵本原画約70点を展示。常に革新的な手法で子どもたちの想像力を刺激し、さらなる進化を続ける、絵本作家・鈴木のりたけの魅力に迫ります。

(1)シュールなデビュー作とダジャレ絵本

(2)絵本一冊まるごと楽しい!

(3)面白くてためになる

(4)何度でも何時間でも楽しめる

(5)ことばあそびで笑っちゃう

(6)子どもだってたいへんさ!

(7)常識をくつがえせ!


作品:ケチャップマン
『ケチャップマン』(2008年、文芸社ビジュアルアートから出版。加筆・修正後、ブロンズ新社から2015年復刊)
キーワード(1)シュールなデビュー作とダジャレ絵本 より
*デザイナー時代に制作された、ちょっぴりシュールな本作にて「文芸社ビジュアルアート出版文化賞2006絵本部門個性派賞」を受賞、デビューをつかみました。本展では、擬人化された食べものたちが、ダジャレをまじえてクイズや早口言葉を出題する、『たべもんどう』(ブロンズ新社 2015年)の原画も展示します。
作品:ぼくのトイレ
『ぼくのトイレ』(PHP研究所 2011年)
キーワード(2)絵本一冊まるごと楽しい! より
*2022年に刊行された最新作『ぼくのねこ』を含め、2010年刊行の『ぼくのおふろ』からはじまる、人気の「ぼくの」シリーズ5作(すべて PHP研究所)より原画を展示。次々と面白いおふろやトイレにであえるのも魅力。デザイナー時代の戦略的な視点や、子育ての経験もいかした、ストーリーを軸として展開する「絵さがし絵本」。
作品:おしりをしりたい
『おしりをしりたい』(小学館 2012年)
キーワード(3)面白くてためになる より
*子どもたちが大好きな「おしり」を題材に、くだらなさに大笑いしながら読んでいくうちに不思議が解明される“面白くてためになる”絵本。『おならをならしたい』(小学館 2015年)では、ラッカースプレーを使用するなど新しい表現に挑戦しています。
作品:おつかいくん
『おつかい おねがい! おつかいくん』(小学館 2016年)
キーワード(4)何度でも何時間でも楽しめる より
*巻貝をかぶったロンパース姿の男の子「おつかいくん」が主人公の迷路絵本。ストーリーにあわせて、自然と迷路に入り込める設定に引き込まれます。
作品:ぶららんこ
『ぶららんこ』(PHP研究所 2015年)
キーワード(5)ことばあそびで笑っちゃう より
*子どもたちが大好きな遊具で「ことばあそび」をしてみたら?という発想で誕生した「遊具(すべりだい・ぶらんこ・すなば)」シリーズでは、コラージュの技法に挑戦。『す~べりだい』(PHP研究所 2015年)のすべりだいや、『ぶららんこ』のぶらんこの鎖にいたるまで描いたものをレーザーカッターで切り抜いてから背景画に貼りつけて制作されています。
作品:なんでもない
『なんでもない』(アリス館 2021年)
キーワード(6)子どもだってたいへんさ! より
*「とんでもない」と不満そうな動物たちと、「なんでもない」と笑い飛ばす動物たちが登場する、『とんでもない』(アリス館 2016年)と『なんでもない』。『ねるじかん』(アリス館 2018年)同様、子どもたちの日常生活にひそむファンタジーが美しい色彩と、のびのびとした筆致で描かれています。
作品:大ピンチずかん
『大ピンチずかん』(小学館 2022年)
キーワード(7)常識をくつがえせ! より
*大ピンチを「大ピンチレベル」の大きさと5段階の「なりやすさ」で分類し、レベルの小さいものから順に紹介。さまざまなピンチに陥る子どもたちの日常が鋭くも優しい目線で切り取られています。本展では、ほかにも、絵本の常識をくつがえすような、革新的な手法とアイデアで制作された『カ どこいった?』(小学館 2018年)、「おでこはめ絵本」シリーズ(ブロンズ新社)、『うちゅうずし』(KADOKAWA 2020年)の原画も展示。どの作品からも、「もっとこうしたい」と、常に意欲的に絵本作りに真摯に取り組む姿勢が伝わってきます。

のりたけさんの故郷・浜松市名産 春華堂の「うなぎパイ」

限定500個でコラボ商品発売予定!

本展期間中、春華堂の「うなぎパイ」をミュージアムショップにて販売。

包装紙を、展覧会仕様にデザイン。のりたけさんが描いた『パイ生地のララバイ 職人くんの日々』の原画も展示します!

 

展覧会関連イベント

鈴木のりたけのトークショー「しごとばができるまで」

申し込みは、8月8日(月)午前10時から お電話(0422-22-0385)のみで受付開始! のりたけさんとゲストによる、ギターとヴァイオリンの演奏もお楽しみに!

日時

場所

8月28日[日曜] 14時00分~16時00分

美術館音楽室

定員

40名(申し込み先着順)

※定員に達したため、受付を終了いたしました。

出演
鈴木のりたけ(絵本作家)・沖本敦子(編集者「しごとば」シリーズ担当)・佐々木絵理子(ヴァイオリニスト 新日本フィルハーモニー交響楽団所属)
参加費
無料 ※ただし、美術館チケットが必要