コンサベーション_ピース ここからむこうへ part A 青野文昭展

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ページ番号1002304  更新日 2022年3月28日

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会期
2017年9月9日(土曜)-10月15日(日曜)
休館日
9月27日(水曜)
開館時間
10時~19時30分
入館料
一般300円・中高生100円(小学生以下・65歳以上・障がい者の方は無料)
主催
武蔵野市立吉祥寺美術館
助成
  • 公益財団法人アサヒグループ芸術文化財団
  • 公益財団法人朝日新聞文化財団
  • 公益財団法人花王芸術・科学財団

青野文昭(1968年仙台生まれ、同地在住)は、宮城教育大学大学院在学中の1990年より「修復」をテーマに掲げ、以後今日にいたるまで、空き地や海岸などに打ち捨てられ、傷つき、壊れたものの断片を拾い、その欠損部分を知識と想像力によって「なおす」というスタイルで制作・発表を続けている。自身も被災者となった2011年3月の東日本大震災後は、津波により破壊された被災物を用いた作品制作にも集中的に取り組んできた。青野は、「復元」という行為の不確実性/不完全性を認めた上で、その復元作業によって顕在化するズレやすり合わせといった様々な異物間の関係性の中に、リアルな世界像を読み込もうとする。

欠落した部分の断面を見つめながら他者の記憶と向き合い、そこに自身の記憶や想像に基づく新しいかたちを与え、接地面の齟齬をならしていく作業。そこでは、他者/過去の記憶を自身の中に取り込み、またそれによって自身が他者の記憶の中に潜っていくような記憶の交感が行われている。

本展に向け青野は、戦前、祖母が暮らしていたという自身にも縁ある土地・吉祥寺周辺地域での収拾活動に基づき、地域全体の記憶を「復元」するという作業に挑戦した。展示会場では、数点の旧作により青野の今日までの制作活動を振り返るとともに、約1年をかけて進められた東京―吉祥寺における新たな取り組みの成果として、大作が発表される。

作品:なおす・延長・八木山1997.10.6
なおす・延長・八木山1997.10.6(1997年)photo:Tsutomu Koiwa
作品:なおす・代用・合体・連置(震災後亘理町荒浜で収拾したトーマスのコップの復元・回向するかたち)2016
なおす・代用・合体・連置(震災後亘理町荒浜で収拾したトーマスのコップの復元・回向するかたち)2016(2016年)photo:Tsutomu Koiwa
作品:なおす・復元・宮古・鍬ヶ崎(震災後宮古実家跡地より収拾した記念時計より)
なおす・復元・宮古・鍬ヶ崎(震災後宮古実家跡地より収拾した記念時計より)(2011年)photo:Tsutomu Koiwa
作品:なおす・代用・合体・侵入・連置(震災後東松島で収拾した車の復元)
なおす・代用・合体・侵入・連置(震災後東松島で収拾した車の復元)(2013年)*あいちトリエンナーレ2013での展示 photo:Tetsuo Ito
作品:なおす・代用・合体・連置(東京・井の頭自然文化園で使われていた自転車の復元から)2016
なおす・代用・合体・連置(東京・井の頭自然文化園で使われていた自転車の復元から)2016(2016年)photo:Tsutomu Koiwa

[イベント] 青野文昭アーティスト・トーク

日時
2017年10月1日(日曜)14時~15時半
会場
武蔵野市立吉祥寺美術館 音楽室
申込

9月11日(月曜)10時~ お電話(0422-22-0385)または美術館受付にて直接申込
※2名様まで同時申込可・先着80名

参加費
無料 ※ただし、当日の企画展入館券が必要

企画展「コンサベーション_ピース ここからむこうへ」

忘れられ消えつつある他者あるいは自己の記憶。それらはできるかぎり保存(conservation)されるべきなのだろうか。失われた/残された記憶を保存するとは、それらとどのような関わりを築くことなのだろうか。

この問いを前に、本展では、拾った断片を用いて制作を行うアーティスト・青野文昭の作品・態度と、個人的・私的に残された記録物に着目するアーカイブプロジェクト・AHA![Archive for Human Activities/人類の営みのためのアーカイブ]の取り組みに注目する。

かけらと対峙し、その「本来のかたち」をさぐる作業の中で、時空を越えて存在した異なるものともの、人と人との関係性を照らし出す青野と、様々な地点に離ればなれに残された記録のかけらの再編集を通し、存在と非存在との境目の問い直しを図るAHA!

欠落や不在への2者のアプローチを通して、記録のかけ/かけら(piece)を起点に、自己から他者へ、現在から過去へ、ここからむこうへ、そしてまた、むこうからここへと境界を越え、消えゆく記憶を蘇生し、受け渡すということの意味を再考する。

戦争や震災の記録のかけらを介し、それらの記憶に触れることを通じて、私たちはまた、自分たち自身が抱く平和(peace)のかたちを見直すことともなる。

※本展は、記録と記憶のあり方をテーマとした2015年度企画展「カンバセーション_ピース conversation piece/peace:かたちを(た)もたない記録 小西紀行+AHA!」からの連続企画である。

[parallel project] コンサベーション_ピース ここからむこうへ part B

はな子のいる風景

終戦直後、「平和の象徴」としてタイより来日し、2016年5月に69歳(推定年齢)で死んだ井の頭自然文化園のゾウ〈はな子〉―。

一般家庭に保管された8ミリフィルムや写真といった私的な記録やそこに刻み込まれた個人的な記憶の存在に関心を寄せ、それらを用いたアーカイブプロジェクトを展開しているAHA![Archive for Human Activities/人類の営みのためのアーカイブ]は、様々な人びとのもとに散在・潜在する膨大な〈はな子〉との記念写真に注目し、2015年よりその収集に着手。本展に向け、集まった写真・関連記録を編集し、記録集を製作した。青野文昭展会場ロビーに、本記録集の読書スペースが併設される。

*詳細はこちら