小畠廣志 木に呼ばれる

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ページ番号1002286  更新日 2022年3月28日

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作品:エロマフロジェット
《エロマフロジェット》1968年 チーク (撮影:山上洋平)

小畠廣志(こばたけ・ひろし 1935-1996)は吉祥寺ゆかりの彫刻家です。母の鼎子は青龍社の日本画家、父の辰之助は洋画家にしてモダンな自由人。創造性に富んだ家庭において、彫刻家・廣志の素地はつくられました。

東京藝術大学美術学部彫刻科(菊池一雄教室)に学んだ廣志は、1959年に初出品した二科展で特選を受賞します。冴えた造形はその後も多方面から高く評価され、1977年には第6回平櫛田中賞に選ばれています。いっぽうで、東海大学、青山学院女子短期大学、美学校ほかで教鞭をとるなど、年若い時分から後進育成にも力を注ぎます。1980年には美学校から独立してKOBATAKE彫刻工房を開校。技術的教授にとどまらず、芸術家としての人間を育む、独自のカリキュラムを展開しました。

さまざまな素材による彫塑から鋳造まで、すべてを自らの手でおこない、1980年代からはリトグラフなどの版画表現にも取り組んだ廣志ですが、彼の造形の基軸は木彫にあったといえるでしょう。塑造や鋳込みといった、彫りとは成立のしかたが異なる表現の存在は、彼の木彫にいっそう豊かな幅をもたせ、得がたい魅力と存在感を増すことにもつながりました。

廣志の作品の多くは人間の姿をあらわしていますが、それは、人間の形体美を具体化したものではありません。作品を前にした者の深層へ呼びかけるための、廣志のフォルムなのです。「材を見て、じかにその素材にフォルムを見付け、その中に時分の形体を入れていくとき、確かに木に呼ばれていく自分があることを感じます」と彼はいいます。作品をつくるという行為がもつ社会的責任をつねに意識していた廣志。彼は、原木と向かいあうなかで見いだし彫りだしたフォルムが、原木よりもはるかに大きな存在となることをめざしつつ、制作にのぞみました。

本展では、木彫作品を中心に、ブロンズ鋳造による作品やリトグラフ、初公開となる資料など40点超により、小畠廣志の仕事を紹介します。年月を経てなお輝きをはなつ廣志の芸術を、ぜひご体感ください。

作品:炎昼
《炎昼》1973年 樟 (撮影:山上洋平)
作品:羽化
《羽化》1971年 樟 (撮影:山上洋平)

関連イベント

詳細は次のリンクをご覧ください

スペシャルトーク

小畠廣志の制作のようすや人物像についてなど、さまざまな角度から語っていただきます。

講師
小畠 刻時(えりとき)
日時
8月10日(土曜)14時00分より15時30分頃まで

野外彫刻ミニ鑑賞ツアー

武蔵野総合体育館および武蔵野市役所敷地内に設置されている武蔵野市所蔵の野外彫刻作品(小畠廣志、北村西望ほか作)を鑑賞します。野外彫刻のあり方についても一緒に考えてみませんか。

講師
坂口 寛敏(美術家、東京藝術大学名誉教授、公益財団法人武蔵野文化事業団理事)
日時
(1)7月27日(土曜)(2)8月31日(土曜) いずれも10時00分より11時00分頃まで

ワークショップ〈木でつくろう!小さな彫刻〉

木の触感と香りを味わいながら、手のひらサイズの作品をつくります。

講師
内平 俊浩(彫刻家)、江幡 三香(彫刻家、スタジオ鼎代表)
日時
8月24日(土曜)(1)13時30分~14時30分/(2)15時00分~16時00分
作品:ユニコーン(習作)
《ユニコーン(習作)》1974年 ブロンズ (撮影:山上洋平)

廣志は東京近鉄百貨店(2001年閉店、現・ヨドバシカメラの場所)のシンボル彫刻としてユニコーン像を制作しました。本作はその習作です。

武蔵野市内各所で小畠廣志の作品を目にすることができます。

作品:子ども平和像
《子ども平和像》1990年 ブロンズ 武蔵野総合体育館前庭
作品:花
《花》1991年 ブロンズ 武蔵野市けやきコミュニティセンター
作品:勝利
《勝利》1958年 本小松石 武蔵野総合体育館前庭
作品:花の精
《花の精》1974年 ブロンズ 井の頭ビル シンボル彫刻

関連情報

会期中、Gallely惺SATORU(御殿山1-2-6 B1)でも小畠廣志の作品をご覧いただけます。

小畠廣志 手びねりと版の仕事

会期
8月24日(土曜)~9月8日(日曜)*月曜・火曜休廊
時間
12時00分~19時00分 *最終日17時00分まで

展示内容など詳細はギャラリーへ直接お問い合わせください(電話0422-41-0435)。

写真:制作中の廣志
制作中の廣志 1980年代頃(写真提供:小畠刻時)