野田九浦 —〈自然〉なること―

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ページ番号1003372  更新日 2022年4月23日

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作品:獺祭書屋
《獺祭書屋》1951年 絹本着色(武蔵野市蔵)

野田九浦(のだ・きゅうほ 1879-1971)は武蔵野市ゆかりの日本画家です。

幼少期から絵画に秀でた九浦は、10代半ばで日本画家の寺崎廣業(1866-1919)に入門、その後東京美術学校に進学します。同校中退後は日本美術院で研鑽を積むかたわら、正岡子規(1867-1902)に俳句を学び、白馬会洋画研究所に通ってデッサンの指導をうけたほか、フランス語など語学の習得にも励みました。

九浦の中心的主題は画業の最初期から一貫して歴史人物ですが、彼が「子規の自然主義芸術論に触れたことが画業の大きな転機になった」と語っているのは注目に値します。九浦が学んでいたころの日本美術院では〈朦朧(もうろう)体〉による表現が追究されていましたが、九浦はあくまで日本画表現としての線にこだわり、描線を埋没させることはしませんでした。そうした彼の描写は一見古風で、華飾なく淡々とした筆致から強烈な個の表出はみえません。しかし、彼の清明な画面と静かに向き合えば、個という狭小な境域を超えた、自然—あるいは宇宙—のひろがりが実感されます。九浦が大切に描いた線には、彼が子規から体得し、みずからのうちに昇華させた「自然主義」が集約しているといえるのではないでしょうか。

博識で知られた九浦は評論や随筆を数多くのこしており、古画や歴史に学ぶのみならず、日本画の将来にも常に意識を向けていました。彼の画塾は吉岡堅二(1906-1990)や鈴木朱雀(1891-1972)、東原徹(1917-2008)といった独自色ある作家を多数輩出しましたが、それは九浦が先見性と懐の深さを具えていたことの証左でもあります。

武蔵野市、こと吉祥寺地域には、古くから多くの文化人が集い、多様な個が大らかに受容されてきました。50年近くを吉祥寺で過ごした野田九浦は、こうした地域性を、まさに自ずから然るべく体現していたともいえるでしょう。

2021年11月、九浦は没後50年をむかえました。そして2022年は吉祥寺美術館開館20年の節目にあたります。武蔵野市史を振り返れば、美術館構想の端緒となったのは野田九浦の作品群でした。九浦の存在によって吉祥寺美術館の現在があるといっても過言ではありません。

本展では、武蔵野市が所蔵する九浦作品から約20点を関連資料とあわせて展観、“歴史人物画の名手”という側面にとどまらない九浦の魅力をご紹介します。稀なる日本画家・野田九浦の仕事に触れるとともに、この時代を生きる私たちのありようを見つめなおす機会となりましたら幸いです。

夏の川
《夏の川》1950年代頃 絹本着色(武蔵野市蔵)
河霞む
《河霞む》1936年 紙本着色(武蔵野市蔵)

基本情報

2022年度吉祥寺美術館企画展 野田九浦—〈自然〉なること―

会期 2022年4月16日(土曜)から6月5日(日曜)

休館日 4月27日(水曜)、5月25日(水曜)

開館時間 10時00分~19時30分

入館料 一般300円、中高生100円、小学生以下・65歳以上・障がい者のかたは無料

主催 武蔵野市立吉祥寺美術館 

関連イベント

「イベント」のページもあわせてご覧ください

特別講演「野田九浦の芸術—歴史・旅・人」

田中純一朗氏(宮内庁三の丸尚蔵館研究員)より、野田九浦の作品や作家としての特徴、近代日本美術史における位置づけなどについてお話しいただきます。

会場 吉祥寺美術館音楽室

定員 40名(先着順)

予約不要・要入館。当日直接会場にお越しください。

講師
田中純一朗氏 (宮内庁三の丸尚蔵館研究員)
日時
4月17日(日曜)14時00分より

〈九浦の家〉見学会

旧野田九浦邸跡地には、現在、吉祥寺東コミュニティセンター〈九浦の家〉があります。地域の方々によって大切につながれている九浦の日常の面影を感じてみませんか。

13時45分に吉祥寺東コミュニティセンター(武蔵野市吉祥寺東町1‐12‐6)へ集合。

定員は各回10名。

ご参加にはお申し込みが必要です。お申し込み、お問合せは吉祥寺美術館へ。電話0422‐22‐0385。

 

解説
青木一郎氏(能楽師、吉祥寺東コミュニティ協議会代表)
日時
(1)5月7日(土曜)(2)5月21日(土曜) いずれも14時00分より

担当学芸員によるギャラリートーク

ご一緒に展示作品を鑑賞しながら、作品の内容や、九浦の画家としての特徴などについてお話しします。

時間は40分程度を予定。

講師
展覧会担当学芸員
日時
(1)4月22日(金曜)18時30分~/(2)4月29日(金曜祝日)11時00分~
作品:K氏愛猫
《K氏愛猫》1954年 紙本着色(武蔵野市蔵)